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背景
この資料の目的は、音声研究のためのオンライン実験(ブラウザ上で実施できる実験)の作成をより簡単にすることです。もちろんこの資料によって出版される論文が増えれば最高ですが、オンラインの手法やデータの妥当性を考える材料として使っていただけるだけでも幸いです。
資料を作成するに至った背景の一つとして、学会でオンライン実験のハウツーに関する質問を耳にしたり、実験作成に関する相談を受けたりする機会が増えたことがあります。この点に関して心理学などの他分野ではドキュメントの整備が進んでいますが、音声言語に特化したものは英語でも情報が不足しています。
しかしながら、流行りのオンライン実験はプログラミングやウェブ技術に明るくない人にとっては難しい部分があります。現在は黎明期ということもあるのでサービスの種類も多く、技術の選定が難しい状態です。そこで今回は対象読者を制限して資料を作成いたしました。
対象読者
この資料は以下の読者を想定しています。
まずオンライン実験の経験はないがオフライン実験の経験はある方々です。なお、仮説の立て方や実験計画法、統計分析などを説明しようとするとスコープが大きくなりすぎるため(つまり準備しないとならない資料が多くなりすぎるため)、これらの内容は既知とします。ただし、AB実験といった具体的な情報は資料で解説するので不要です。
加えて、オンライン実験を作成するのでPCやイヤホン、マイクなどの音響機器は必要です(大抵の場合はPCに備わっているとおもいますが)。これに対し、細かい知識、例えばプログラミングや統計の知識は補足資料で解説するので不要です。したがって JavaScript とは何か、正規分布とは何か、Google Chrome とは何か、といった知識も不要です。
なぜオンライン実験(そしてjsPsych)?
今回のチュートリアルは「オンライン実験をjsPsychを用いて作成する」という内容にです。そこでまず、オンライン実験とオフライン実験との比較を紹介します。もちろんオンライン実験とオフライン実験はどちらが良いというわけではなく、異なる性質を持っているだけなので使い分けが大事です。
まずはオフラインの実験から考えてみると、環境の統制に強いメリットがあります。例として、被験者のモニタリングが容易だったり、機材を揃えられたりするので、データにノイズが乗りづらいです。また、オフラインなら高価なハードウェアが使えます。
対して、オンラインはスケーラブル(時間や空間に制限されない)です。被験者が海外にいても対応できますし、過去の実験でもURLを使いまわせますし、実験の時間帯も被験者におまかせできます。さらに実験に参加する人数も自由に調整できるので、100人程度ならすぐに並列してデータを収集できます。
ただ、オンライン実験はスケーラブルですが、サービスが多くて選定が難しくもあります。例として、心理言語学の分野ではPCIbexというサービスもよく使います。音声にまつわる実験では、どちらでも実現できる実験に大差はないのですが、ここではjsPsychを推しています。
理由として、jsPsychのほうがコードが簡潔でネストが浅く、また実験を実施する際の選択肢が豊富で安定しています。他にもGUIで実験作成可能な GORILLA Experiment Builder なんかもあり(有料ですが)、jsPsych は GORILLAからインポートできます。こうした理由から、本チュートリアルでは jsPsych を紹介していきます。
本資料の構成
本資料は以下の構成を取ります。基本的に頭から読み進めてもらえればよいかと思います。
- 知覚実験の概要(AX実験、ABX&AXB実験、自然度測定の説明)
- ミニマルな知覚実験の作成(jsPsychの概要とミニマルな実験の作成)
- jsPsych(基本)(jsPsychの基本機能であるtimelineやpreloadなど)
- jsPsych(発展)(jsPsychの発展: リスト作成やランダマイズなど)
- 産出実験の概要(作成中)
- 産出実験の作成(作成中)
また、フォローしてほしい範囲があればお気軽にご連絡ください (GitHubに登録し、こちら のリンクから要望をお書きください)。 この資料はオープンソースですので、編集に加わってくださるのも歓迎です🤗